息は背中に入れる!
昔は「息は腹に入れる」など言われたりしたが、
今では「息は背中に入れる」のが歌の世界の常識。
歌の腹式呼吸の見本として、睡眠中の腹式呼吸が、
例に挙げられることがありますが、あれは勘違いです。
すぐれた歌手の歌い方を観察すると、
そういう呼吸で歌っている人の居ないことはすぐに分るでしょう。
(歌うときは、お腹は、凹まさない)
睡眠中の呼吸は歌う為の呼吸ではなく、身体を休める為の呼吸。
お相撲さんも、相撲を取った後に、休めるように大きく腹式呼吸をしてます。
歌うという行為は、ある種の力仕事。
その力仕事を為すのに最適な呼吸は別にある。
本来、人間は歌おうとすると、
本能的に「背中に入れる呼吸」になるはずなのですが、
現代人はその自然なことが自然に出来なくなっている。
生活や文化の変化によって、
背中に入れる呼吸をつかさどる筋肉が眠っているからです。
(重いもの、持ち上げる時、セイノー、ホッ!)
(この時のセイノーは、背中に息を入れるハズ)
「背中に入れる」と聞いても、
実際にどうするのか分らない人が多いかも知れませんが、
本能的なものですから、
リハビリしてその筋肉を目覚めさせれば、
誰でも当たり前に出来るようになる呼吸です。
吸気に関して、しばしば「腰に深く入れる」とか
「背中の深い部分に入れる」などという表現がされる。
この場合の「深く」は、深呼吸の「深」とは意味が違う。
深呼吸の「深」は、「肺にいっぱい空気を入れる」という意味。
歌う吸気では、肺にいっぱい入れない方がいいのです。
(胸の中を高圧にすると苦しくて息はすぐに出てしまいます)