大脳の2面性 (に対してオノマトペの役割 )
擬音語(ぎおんご:Onomatopeia)と擬態語(ぎたいご: Mimesis)
テレビ中継などで、スポーツ選手のかけ声、耳にする! 実はこの声、単なる「気合い」や「勢いづけ」では片づけられないスゴイ効果がある。
音のリズムが脳に働きかけることでふだん、私達が意識することのない、
「眠った能力」を引き出してくれる。
好きで始めたスポーツなどのさまざまな趣味。
でも、あるところまで上手くなると、必ずつき当たるのが伸び悩み…。
毎日トレーニング(筋トレ・素振り)するも、上達に頭打ちを感じる。
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《ゴルフ》
スーッ・ガァァァー
クラブを引くテークバックのときに 息を吐きながら「スーッ」と発声し、
クラブを振り下ろすときには、 思いっきり「ガァァァー」と声を出す。
ドライバーの飛距離が、「スーッガァァァー」と声を出すだけで
20ヤード(約18.3メートル)も伸びてしまった。
《とび箱 》
タッタッタッタッ・トッ ・ヒュッ。
助走 踏切 飛び越え
それは…この言葉を、まずは目を閉じながら、
実際にとんでいるようなリズムで声に出すようにする。
そして、とぶ時には、自分で声に出しながらとんでみる
あるいは、先生が出す声にあわせてとんでみることを繰り返す。
すると…
4段のとび箱がとべなかった子どもたちが、
あっという間に6段もとべるようになってしまった。
秘密を解くカギはこれらの言葉が持つ音のリズムと、脳の働きにある。
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(1)音のリズムが大脳の働きを押える
私達は、体を動かすとき、脳のさまざまな部分を働かせているが、
その司令塔となるのが大脳。
大脳は、体を動かすとき、体のどこをどのように動かすのか計画し、
筋肉に指令を出すという 複雑で高度な仕事を担っている。
ところが! この大脳が、上達の大きなブレーキとなることがある。
ゴルフであれば…「遠くへ飛ばしたい」
とび箱であれば…「こわい」
そして
「あの人に勝ちたい」
「失敗したら恥ずかしい」…という、
大脳の働きによってもたらされる意識、いわば“邪念”。大脳の2面性。
この“邪念”が大脳の運動指令に混じってしまうことが、
力みや姿勢のズレなどにつながり、本来持っている運動能力を、
十分に発揮できなくなると考えられる。
それでは、声を出すことで、この“邪念”は、どうなるのか?
声を出したときの大脳の活動を調べてみると…
声を発したとき、著しく活動が低下している部分がある。
それは…大脳の前頭前野というものを考える中心となる部分。
つまり、声を出すことで“邪念”が吹き飛び、
その人がもともと持っている能力が、フルに発揮された結果、
ゴルフの飛距離が伸びたり、とび箱が突然飛べるようになったと考えられる。
(2)音のリズムが小脳の働きを活性化
音のリズムが働きかけていたもうひとつの脳とは、小脳。
小脳は、意識をつかさどる大脳に対し、無意識を担う部分。
実は、この小脳こそが、運動上達のカギを握っている。
そもそも、上達するとは…運動を自動化(無意識化)すること。
つまり、繰り返し練習すると、最初は大脳で考えながら行っていた運動が、
小脳中心の活動に移り、考えなくても無心に体を動かせるようになる。
この変化こそが上達だと考えられる。
大脳の司令塔から離れて動く。
そして、この小脳をより活発に働かせるための秘策が…音のリズム!
目から得た視覚情報は、必ず大脳を経由して処理されるが、
耳から得た聴覚情報には、小脳に直結して処理されるルートがある。
このルートがあるために、人は、ノリのよい音楽を聞くと、
無意識に指で拍子をとったりする。
それゆえ、ゴルフやとび箱では、
「スーッガァァァー」や「タッタッタッタットッヒュッ」という
音のリズムを耳から入れることで、 その音のリズムにあわせて無意識に
体を動かすことができたと考えられる。
※体の動かし方のコツさえつかめば、
それほど大きな声を出さなくてもよくなると考えらる。
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暮らしに役立つ魔法のコトバ(オノマトペ)
ゴルフやとび箱でおきた驚くべき変化は、スポーツのみならず、
日常の家事や料理などにも 応用できる。
★卵焼きを上手にひっくり返すリズム★
けん玉をする要領で、手とヒザを連動させ、体全体を使って卵を返す。
1.「タンタン」のとき、ヒザだけで、2回リズムをとると、
「ポーン」のとき、手とヒザを連動させやすい。
2.「ポーン」のときは、 ヒザは「タンタン」のときと同様に動かし、
手はヒザの勢いにまかせる。
★中華鍋でチャーハンを上手に炒めるリズム★
1.小さい「ッ」を意識して、「サッサッサッ」と
声に出すと、鍋を振る動きにキレが出る。
2.3回目の「サッ」を強めに発声し、
3回目で大きく返すイメージで行うと かえしやすい。
★かた~いビンのフタを気持ちよく開けるリズム★
1.母音の「ゥ」を意識して発声すると、 筋力が発揮されやすい。
声を出すことで握力が平均3kgアップ するというデータも。
★アイロンできれいにシワを伸ばすリズム★
1.「スゥ」ではなく「スーーーー」と発声すると 無駄な力が入らない。
2.「スーーーー」と発声することで、
アイロンや鉛筆などをまっすぐ動かすことが できる。
[NHKためしてガッテンより]